東北大地震・大津波から4ヵ月が経過した今、現地の被災者の方々の復興への取り組みも、まだ糸口に着いたばかりとはいえ、漸時ニュース等でその様子が伝わってくるようになりました。
しかし、原発事故による避難区域では、人間の活動はまったく途絶えたまま。
野生化し餌を求めてさまよう家畜も、早晩死に絶え、完全にゴーストタウンと化すことがわかっていても、もはや我々には救う手立てもありません。
地震・津波は自然災害ですが、原発事故は地震・津波により露呈した人災です。
地震や津波のニュースには悲しみを覚えますが、地震や津波が「想定外」と言い逃れをする原発関係者には憤りさえ感じます。
「原子力村」の人々は、一旦燃え始めると消すこともままならない「神の火」に対し、あえて不測の事態に目をつぶって「安全神話」を作り上げ、常に人知のコントロール下にあると宣伝し、我々に錯覚を抱かせてきたわけですが、このたびの大災害で、ついにそのうその構図が暴かれてしまったわけです。
都会に住む我々も、原発には潜在的リスクを感じながらも、自らの電力需要をだまって地方に押し付けて来たわけですから、決して罪がないとは言い切れません。
今、大いに反省し、原発を再考すべき時が来ているのではないでしょうか。
原子炉でウランを連鎖反応的に核分裂させ、その時に発生する熱を利用して蒸気を沸かしタービンを回すのが原子力発電所ですが、原子炉が「燃える」過程で二酸化炭素は生じないかわりに、様々な放射性核種(放射性廃棄物=死の灰)が生成されます。
それが大気中に拡散し、海に流出しているのが「FUKUSHIMA」の現実です。
東日本の各地では連日放射能濃度が測定され、汚染された稲ワラを食べた牛の肉からは、高濃度の放射能が検出されています。
この肉を食べれば人間も当然内部被ばくをするわけで、食物連鎖の恐ろしさはとどまるところを知りません。
それでも、「ただちに・・・影響はない」というコメントが出されることが多いのですが、比較的先の短い大人はともかく、将来性豊かな子供達にとってはどうなのか。
放射線の感受性が大人より数倍高く、がんなどの晩発性後遺症に遭遇しやすい子供達には、当然大人より厳しい規制があってもしかるべきなのに、校庭利用の放射線許容限度は、行政のご都合主義から「20ミリシーベルト」と決められました。
病院の放射線管理区域で一般人の立ち入りを制限しているのは「1ミリシーベルト」、放射線技師などの専門従事者の許容限度が「20ミリシーベルト」です。
病院に連れて来た子供が、一人で放射線管理区域に入り込んだら、親は慌てて引き止めると思うのですが、被災地では、子供の扱いが、平常時の一般人を飛び越え、放射線技師と同じレベルだというわけです。
私は、手術では治療が難しいと言われた前立腺がんを78グレイ(2グレイx 39回)の放射線治療で治すことができました。
その意味では放射線の恩恵に浴している一人ですが、原発事故による放射能と、病院で行う放射線治療とはどのように違うのでしょう。
医療用の放射線というのは、原子核の分裂により発生するものではなく、直線加速器(リニアック)により電子を加速し、それを金属に当てることによりX線を発生させています。
要するに人間の意思によるコントロールが可能で、発生する放射線も原子核分裂ほど多種ではなく、X線に限定されます。
(陽子線や中性子等もありますが、ここでは省きます)
放射線治療ではグレイという単位が用いられ、放射能測定ではシーベルトという単位が用いられていますが、話を単純化すれば、X線やガンマ線では放射線荷重係数が1ですから、シーベルト=グレイと考えて差し支えありません。
私は、毎日2シーベルト(2グレイ)の放射線を前立腺に受けたわけですが、これはあくまで限局的です。もし、これを全身に浴びると、5%の人が30日以内に亡くなると言われています。広島原爆で浴びせられた放射線量は約4シーベルトで、これだと約50%の人が亡くなるそうです。全身に放射線を浴びると、7シーベルトでほぼ全員が死亡するとのことですから、合計78シーベルトの放射線を浴びた私がピンピンしているというのは、あくまで限局的な外部照射だったからに他なりません。
放射線が原子に当たると電子を弾き飛ばしてイオン化する作用がありますが、これが細胞のDNAにも損傷を与えます。
細胞分裂が盛んな細胞ほどこの影響を受けやすいわけですが、がん細胞は正常細胞より細胞分裂が活発なことが多く、また、ダメージの復元力はがん細胞より正常細胞のほうが勝っています。こうした細胞の感受性の差、復元力の差を利用して、がん細胞を選択的にやっつけることが可能なわけです。
核分裂反応を伴わない放射線治療は、晩期後遺症への注意はそれなりに必要ですが、今後ますます進歩・充実していかなければなりません。
私は、原子力の研究者よりも、放射線治療医や医学物理士が増えることを切に願っています。
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