2013年1月7日月曜日

熊野古道(伊勢路)

正月の3日から6日まで、家内といっしょに熊野古道(伊勢路)に出かけました。
伊勢路(新宮~伊勢)をアバウトに見れば、三重県のほぼ海岸線沿いですから、海を見ながらの気楽なコースと思われる方もおられるでしょうが、実は山道も多く、総延長は約170km。一度にすべてを歩き(走り)通そうと思えば、ウルトラマラソンなどで普段から鍛えている人は別にして、普通の人なら無事に歩き通せたとしても、一週間以上かかるのではないでしょうか。
このたびはその一部で比較的人気のあるコースを厳選?、初日は新宮、最終日(4日目)は伊勢に、観光気分の寄り道をしたので、丸々歩いたのは中の2日間でした。
熊野本宮大社は2008年に一度、那智大社には去年も含め3度行ったことがあるのですが、新宮の速玉大社に立ち寄るのは始めてでした。これは本殿。
神宝殿の脇には、熊野地方出身だったと言われる弁慶の木造彫刻があり、出来栄えにしばし見惚れる。帰宅後調べてみると、龍神村在住の「チェ-ンソー彫刻」の世界チャンピオン城所啓二さんの作品であることが判明。

速玉大社はそもそも、この近くにある神倉神社のゴトビキ岩に降臨された神様を今の場所に遷宮したもので、新宮の名前もここからついたものだとか。
神倉神社の鳥居をくぐればいきなりこの急傾斜の石段が続きます。

汗をかきながら数百段の階段を上ると、最近パワースポットとしても人気もあるゴトビキ岩が現れる。かなりの迫力だが個人的には滋賀県太郎坊の大岩のほうがより印象が強烈だった。

このあとはJR新宮駅から三木里駅に移動し民宿に泊まる。
二日目は8時に宿を出て、コース最大の難所と言われている八鬼(やき)山越えへ。
道は、比較的なだらかな明治道と、急傾斜で尾根に取りつく江戸路に分かれるが世界遺産になっている後者を選択。「槍かたげ」と言われる急坂も、普通の山路とさほど変わらなかったので、ことによると「石畳が多いし登りやすい」と宿の人が勧めてくれた明治道のほうが正解だったかも知れない。八鬼山頂上に近い尾根からの眺めはこの通り綺麗だったのでまあ良しとしますか。

八鬼山(627m)の峠を越すと、石畳や苔の岩も目に触れるようになり、古道らしい雰囲気が出てきた。

あちこちに石地蔵が点在している。行き倒れになった巡礼の墓標もあり、最大の難所と言われるだけのことはある・・・今も水場は少ないし、昔は相当難儀したことだろう。

山を下ると石油タンクや火力発電所もあり、一気に現実世界に引き戻される。案内の矢印通りにくねくね曲がる矢浜の狭い路地を通ったものの、昔の雰囲気はほとんど残っておらず、路地裏を抜け街道に出て正直ほっと。尾鷲駅周辺には歴史を感じさせる町屋もチラホラ。

馬越(まごせ)峠へ向かう。
半ば登ったあたりから石畳が始まり、少し横にそれると落差10mほどの小滝もあった。
休憩ベンチでおにぎりの昼食。標高325mの峠に到着。

熊野古道はそのまま真っすぐ進むのですが、通りすがりのハイカーから絶景と聞いた天狗倉山へ立ち寄ることに。東へ延びる尾根伝いに登っていくと、頂上近くになって檜の枝越しに巨岩が見えてきた。写真では判りにくいが度胆を抜かれるほどデカイ。こんな岩がいくつかある。

梯子のかかった巨岩を登るとそこが頂上(522m)。ほぼ360度が見渡せます。岩の上は広いけれど恐がりの人には梯子からの移乗がやっかいかも。(家内も下で待機)

馬越峠まで引き返し(往復で約1時間)本来の熊野古道に戻ります。
下りは石畳と羊歯の群生がきれい。
山を下って国道と合流、道の駅でコーヒー休憩のあと、相賀駅近くの宿についたのは夕方4時過ぎでした。

8時に宿を出る。始神(はじかみ)峠の登りは、江戸道に取りつくには国道を長く歩かなければならないので、傾斜の緩く池の傍を通る明治道を選択。峠の頂上を少し過ぎたあたりにベンチがあって展望も効く。

峠の下りは江戸道を経由。平地へ下りて三野瀬の集落を過ぎ、三浦峠に向かおうと緩い坂を登り始めたら、後ろから「お~い」と呼ぶ声がする。振り向けばをよたよた自転車を漕ぐ初老のおっちゃん。私達を見かけ古道歩きに違いないと思って後を追ってきたという。
この写真の記念グッズを「ワシが趣味で作ったもの、お守り代わりに持っていけ」と差し出してくれた。いたく感激!

三浦峠の下り(熊谷道)もヒノキ林と羊歯が多い。

海岸近くの神社から古里トンネルの向こうへ抜ける山道に「崩落危険・進入禁止」の札が据えられていた。先行偵察してみたが、崩れ後は数か所あったものの、通行は十分可能だった。
古里温泉の案内看板を横目に、舗装道を登り左の林道に踏み入れるとあっけなく一石(いっこく)峠。そのまま下って国道に出る。
ツヅラト峠に向かう道は二通りあり、海沿いの道を進んだがこれが間違いの元。海岸線が複雑に入り組んでおり、案内図にない橋が数本あったりして道を間違え、かなり余分な時間を食ってしまった。
この写真は遅れた分を取り戻そうと、急いでツヅラト峠の登り口を目指すところ。

たかが357mの峠と思っていたが、すでにかなり歩いていることもあったのか、登り口から先、峠までの登りが予想以上に長く感じられた。

ツヅラト峠に到着。西に続く尾根を少し登ったところに見晴らしの良い展望所がある。

峠を下ってから林道と県道を歩くこと約2km。午後4時、梅ヶ谷駅に着く。駅舎のない無人駅であらかじめ調べたところ宿もなさそうなので、松阪まで電車で移動しました。
あくる日(6日)は、お伊勢さんのお参りです。もう少し鳥居に近寄ってカメラを構えると、警備員に注意を受けました(^^;

二見ヶ浦はほぼ40数年ぶり、ほとんど覚えていなかったので案外新鮮でしたね。

3泊4日の旅が無事に終わりました。
熊が出没すると聞いていたものの、出会ったのは尻の毛の白さが目立った鹿2匹と、尻の赤い猿が数匹のみでした。
伊勢路は時々町中に出てしまうので、古道の雰囲気は4年前に行った古色蒼然たる雲越えには及びませんが、それでも十分、新鮮な空気を吸い、鋭気を養いながら古の参詣道を楽しめました。

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